健康保険組合連合会(健保連)は8月22日、花粉症薬を保険の適用外とするべきと提言しました。
花粉症はもはや国民病といえるような病気の上、今まで3割負担だったのが、いきなり全額負担となるとかなり影響が大きいですね。
Twitterではこの提言に対して花粉症の人たちの不満が続出し、ちょっとした話題になっています。
今回は健保連の出した提言の内容と、対象となる可能性のある薬について調べました。
健保連による提言の内容
今回の件については、すべての花粉症薬が保険適用外の対象となる、というように受け取られた方も多いようですが、実際には違うようです。
まずは、健保連の出した提言をそのまま以下に引用します。
まずは、花粉症を主病とする患者に対して、1処方につきOTC類似薬を1分類のみ投薬する場合は、スイッチOTC医薬品を使用して自ら治療する患者との整合性を図る観点から、当該薬剤について原則、保険適用から除外すべきである。
政策立案に資するレセプト分析に関する調査研究Ⅳ」 本文 (PDF)
つまるところ、保険適用外となる条件は以下の二つです。
- OTC類似薬であること。OTC医薬品とは 薬局などで処方せん無しに購入できる医薬品です。つまり市販の医薬品の類似の薬であることが条件です。
- 1処方につき1分類のみの投薬であること。
OTC類似薬であることから、市販されていないような強力な薬などは保険適用外とはならないということになります。
また、引用した文章の中にOTC類似薬を保険適用から除外する理由も「 スイッチOTC医薬品を使用して自ら治療する患者との整合性を図る観点から 」書かれていますね。
つまり、自分で市販の薬を使って治療する人は全額負担なのに、病院に行って処方してもらうと3割負担になるのはおかしい、ということですね。
健保連の立場からすれば、医療費負担を軽減するという目的も大きく、結果的に同じ薬を処方されるなら、病院に行かず最初から市販薬を購入してほしいという思いなのかもしれません。
保険適用から除外される薬は何か?
さて、では保険適用から除外される可能性がある薬には何があるのでしょうか?
いくつかの花粉症の医薬品について、OTC医薬品の有無を以下の表にまとめました。
クラリチン | OTC有 |
アレグラ | OTC有 |
ジルテック | OTC有 |
エバステル | OTC有 |
アレジオン | OTC有 |
ザイザル | – |
デザレックス | – |
ビラノア | – |
アレロック | – |
ディレグラ | – |
タリオン | – |
「OTC有」と書いてあるのがOTC医薬品がある薬ですので、これらが保険適用から除外される可能性があります。
OTC有の中のアレグラは処方金額も多く、花粉症の方の中では、使用されている方も多いのではないかと思われるため、これが保険適用外となると影響が大きそうです。
花粉症薬をできるだけ安く買う方法
花粉症薬の中には後発品が出ているものもあります。
後発品は先発品と同じ成分であっても、開発コストが抑えられている分、薬価を抑えて販売されています。
花粉症薬の保険適用除外を恐れるより、まずは後発品で今使っている花粉症薬と同じ成分のものが出ていないかチェックすることをお勧めします。
例えば、先に示したアレグラには、アレルビという後発薬が出ています。
Amazonで調べたところ、2019/08/24現在アレグロの値段は28錠のもので1,620円、アレルビは同じ28錠のもので540円と、約1/3の値段で購入できます。
家計への影響は?
OTC医薬品がある薬が保険適用から外れた場合どの程度の影響があるかもう少し深堀りしてみましょう。
以下は厚生労働省が出しているNDBオープンデータから、抗ヒスタミン薬の処方量(院外処方)を上位20位まで抜き出し、上の表で示したOTCの有無を付け加えたデータです。
順位 | 医薬品名 | 薬価 | 処方量 (百万) | OTC有 | 後発品 |
1 | タリオン錠10mg | 46.4 | 286.37 | ||
2 | ザイザル錠5mg | 96.4 | 231.14 | ||
3 | ザイザルシロップ0.05% | 17.9 | 185.15 | ||
4 | アレグラ錠60mg | 64.9 | 179.71 | 〇 | |
5 | フェキソフェナジン塩酸塩錠60mg「SANIK」 | 34.4 | 138.03 | 〇※1 | 〇 |
6 | フェキソフェナジン塩酸塩錠60mg「EE」 | 29.4 | 137.39 | 〇※1 | 〇 |
7 | タリオンOD錠10mg | 46.4 | 127.50 | ||
8 | アレロックOD錠5 5mg | 51.5 | 112.18 | ||
9 | アレロック錠5 5mg | 51.5 | 105.00 | ||
10 | ディレグラ配合錠 | 62.3 | 84.05 | ||
11 | フェキソフェナジン塩酸塩錠60mg「KN」 | 29.4 | 58.24 | 〇※1 | 〇 |
12 | オロパタジン塩酸塩OD錠5mg「明治」 | 21.7 | 46.36 | 〇 | |
13 | アレロック顆粒0.5% | 68.7 | 43.51 | ||
14 | アレジオン錠20 20mg | 120.3 | 39.67 | 〇 | |
15 | クラリチン錠10mg | 86.7 | 30.30 | 〇 | |
16 | フェキソフェナジン塩酸塩錠60mg「トーワ」 | 29.4 | 30.08 | 〇※1 | 〇 |
17 | クラリチンレディタブ錠10mg | 86.7 | 25.86 | 〇 | |
18 | エピナスチン塩酸塩錠20mg「サワイ」 | 43.8 | 23.66 | 〇※2 | 〇 |
19 | オロパタジン塩酸塩錠5mg「明治」 | 21.7 | 23.03 | 〇 | |
20 | オロパタジン塩酸塩錠5mg「日医工」 | 21.7 | 23.00 | 〇 |
※1. アレグラの後発品で、アレグラ自体がOTC有のため、OTC有としています。
※2. アレジオンの後発品で、アレジオン自体がOTC有のため、OTC有としています。
処方量の上位3位の「タリオン錠」、「ザイザル錠」、「ザイザルシロップ」についてはOTCが無いので保険適用除外の心配はないでしょう。
4位の「アレグラ」は先ほど紹介した「アレルビ」という後発品が出ているので、そちらを購入するか、5,6,11,17位に入っているフェキソフェナジン塩酸塩錠も同じくアレグラ錠の後発品ですので、アレグラを処方された場合には薬局などで後発品を出してもらうように頼めば、これらの安い後発品を出してもらえるはずです。
さて、問題は5, 6, 11, 17位に入っているフェキソフェナジン塩酸塩錠を現時点で処方してもらっている場合です。
こちらはアレグラの後発品のため、OTC有として保険適用から外れる可能性がありますし、すでに安い値段のものが処方されており、これ以上安い代替品を買うという選択肢もないため、保険適用の影響を受けることになりそうです。
7, 8, 9, 10, 13, 19, 20位の「タリオン」、「アレロック」、「ディレグラ」、「オロパタジン塩酸塩錠」はOTCなしのため影響はなさそうです。
14,位の「アレジオン」ですが、こちらは19位に入っている「エピナスチン塩酸塩錠」が後発品としてあるため、処方された際に後発品を出してもらうようにしてもらえば影響は小さいでしょう。
15, 17位の「クラリチン」ですが、こちらも「ロラタジン錠」という後発品が出ていますので、処方の際、ロラタジンを出してもらえば影響は少なそうです。
18位の「エピナスチン塩酸塩錠」はOTC有の後発品のため、すでにこれを処方してもらっている方には影響がありそうです。
まとめ
健保連から花粉症薬の保険適用除外の提言があったため、その詳細を調べました。
まだ提言段階ですので、実際に保険適用外となるかは未定ですが、処方額の多いアレグラも対象となる可能性が高く、影響は大きいと思われます。
ただ、花粉症薬の中には後発品が出ているものもあるので、薬価の安い後発品の購入されたり処方してもらえば、実質的な影響は少なそうです。
すでに フェキソフェナジン塩酸塩錠 や エピナスチン塩酸塩錠 といった、後発品を処方してもらっており、これらのOTC医薬品があるといった場合のみ、今より薬代が高くなってしまう可能性があります。
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